Aさんが言えばとっても組織はスムーズに動き、Bさんが言ってもあまり組織が動かない。
何故でしょうか。
まずは、それぞれで要因を考えてみてください。
組織を動かすパワー
要因を考えてみた後は、どうすれば組織を動かすことができるのかを学習しましょう。まず最初に紹介するのは「組織を動かすパワー」です。
ジェフリー・フェファー教授(スタンフォード大学)は、組織を動かすパワーには3種類あるとまとめています。
公式の力
公式の力とは、配置、降格、昇進、昇給などの権限や、人事情報・人事評価を操作する力です。権力、権威とも呼ばれます。
個人の力
個人の力は、高い専門性やカリスマ性、同一化力を持つ人が保有している力です。同一化力とは、あんな風になりたいと思われる力のことです。人間的な魅力とも言い換えられます。
関係性の力
個人の力は、人と関係性をつくる力のことです。他者に対する感受性、自分の主張に対する柔軟性、自分のエゴを隠す能力に起因します。
いずれも、簡単に身につくものではありません。けれども「自分には無いから組織を動かすことはできない」と諦める必要はありません。誰でも最初は持っていません。努力を重ねた結果、身に付いていく能力です。
影響力の武器
「組織を動かすパワー」を身につけるためには、相当な期間が必要ですが、次に紹介する「影響力の武器」は明日から試せるようなものです。
影響力とは「無意識に行動を決定させる力」です。上司や部下、他部署の人だけでなく、取引先(顧客/仕入れ先)にも使えるようなものです。稟議を通すときや部下に行動をして欲しいとき、商談時等で活用できます。
以下は、社会心理学者のロバート・チャルディーニ博士は、無意識に行動を決定させる力「影響力の武器」には、以下の6つがあるとまとめています。
1 返報性
先に何かを提供しておいてから、相手に物事を依頼する。ギブアンドテイク。
2 コミットメントと一貫性
自身が宣言した内容や過去の発言と合致した要求には同意しやすくなる。応用したのがフットインザドアテクニック。フットインザドアテクニックとは、負担の少ない依頼でYESを得た後なら、やや負担がかかる依頼にも応じやすくなるというテクニックです。(例:書類のこの部分だけ直してもらえますか?→YES→この書類を作る作業もお願いしていいですか?)
3 社会的証明
多数の支持を集めている内容には無意識に良いものだと感じて同意してしまう。
4 好意
身体的魅力を持つ人、自分と似ている点がある人、自分に賞賛をくれる人、一緒に頑張った経験がある人等。単純に接触回数が多いことでも親密性を感じる場合がある。
5 権威
「先生」と呼ばれる人、素晴らしいと讃えられている人には従いやすい。単なるシンボル(肩書き・服装)も有効。
6 希少性
機会が貴重な時、失いそうな時、価値を高めに見積もってしまう。例:「こんなチャンスは2度とない」
「影響力の武器」は、広告制作や営業活動では、日常的に取り入れられています。日々の買い物で、無意識に購入を決めているものは「影響力の武器」によるものかもしれません。善意を持って、ぜひ活用していきましょう。
人を動かすステップ
以下は、社会心理学者のロバート・チャルディーニ博士による「人を動かすための6ステップ」です。大きな取り組みの際には、一度立ち止まって、整理してみましょう。
1 ありたい姿を描く
目的、長期的なゴールを整理する。志や理想像を言語化する。
2 状況の分析を行う
関わる相手の状況や自分の状況、関係性、環境を分析する。
3 基本スタンスを定める
主張を通す、相談する等、方向性を決める。
4 アプローチを考える
具体的にどう行動するかを決める。
5 実行する
上手くいかない場合、フローをさかのぼって再チャレンジ。
状況の分析
上記のステップの中でも、最重要ポイントは「状況の分析」です。相手のことを知ることが大事です。確認するポイントは以下の通りです。
相手の状況について、分析する項目
・主要な役割と責任の範囲
・その人が評価される基準
・主要な関係部署、関係者
・キャリアの方向性
・仕事のスタイル(結果重視、スピード重視等)
・コミュニケーションスタイル(気さく、無駄話はしない等)
・気がかり、プレッシャーに感じていること
・これまでの仕事の経験、受けてきた教育
・仕事外の興味、関心事
・大切にしている価値観
・自分と相手との依存関係
依存関係とは、自分がいないと困るという状況の有無のことです。自分に対する依存度が高い場合、相手は自分の話を受け入れやすくなります。(例:事務作業が苦手で、その作業のほぼ全てを特定の部下に委ねている等)依存を生み出す源泉は、重要性、希少性、非代替性です。
これらを踏まえて、基本スタンスやアプローチの方法を決めます。
自分が何を目指しているか、相手のことを知っているか
今回の記事では、「組織を動かすパワー」「影響力の武器」「人を動かすステップ」を紹介しました。人に動いてもらうにあたり、テクニック的な部分もありますが、大切なことは「自分が何を目指しているか」「相手のことを知っているか」です。「ただ仕事だからやらないといけないことをやっているだけ」という人が、人を動かすことは困難です。同様に相手のことを一切知らずに、人に動いてもらうことはゴール達成への近道ではありません。
自分が何を目指しているかをしっかり語ることができて、相手のことをしっかりと理解できるようなコミュニケーションを取り続けることが大事です。