まずは2つのケースをご覧ください。
とある店舗にて・・・
アクセサリーコーナーの汚れを発見した店長Aさんは、スタッフBさんに
「アクセサリーのコーナーが汚れていたので、綺麗にしてほしい」とお願いした。
数分後、Bさんは「アクセサリーコーナーを綺麗にしておきました」と店長に報告した。
別の店舗にて・・・
アクセサリーコーナーの汚れを発見した店長Cさんは、スタッフDさんに
「アクセサリーのコーナーが汚れていたので、綺麗にしてほしい」とお願いした。
数分後、Dさんは「店内の汚れがあった場所は全て綺麗にしておきました」と報告した。
ケース1に登場するスタッフBさん、ケース2に登場するスタッフDさんは、同じ指示を受けたにもかかわらず、それぞれ異なる行動を取っています。なぜ、2人の行動に違いが出るのでしょうか。
「抽象化」とは
「抽象化」とは、物事を意図的に抽象的に捉えていく思考プロセスのことです。物事をぼんやりさせるといった意味ではありません。大きな視点で俯瞰(ふかん)的に捉え、形のない「概念」に置き換えることです。
まずはこちらの例をご覧ください。
思考プロセス:
「ポチは骨が好きなのか」
→「ということは、犬は骨が好きなのか」
→「犬は骨が好きなら、他の犬のタロウやハチも骨が好きだろう」
このような過程をたどり、「ポチは骨が好き」という事実から、「他の犬のタロウやハチも骨が好き」という推測にたどり着いています。この例では、2つ目の「ということは、犬は骨が好きなのか」という部分が「抽象化」です。「ポチ」から「犬」という大きなカテゴリーに視点を変えています。
別の例も見てみましょう。
思考プロセス:
「この人はランニングがしたいのか」
→「ということは、健康になりたいのか」
→「健康になりたいなら、サプリメントでの栄養補給や食生活の見直しにも関心があるのかな」
今回の例では、「ランニングがしたい」という具体的な要望から、「健康になりたいのだろう」といった根本的な要望があることを推測している点が「抽象化」の部分です。
「抽象化」の失敗例
思考プロセス:
「ポチは骨が好きなのか」
→「ということは、犬は骨が好きなのか」
→「犬は骨が好きなら、他の犬のタロウやハチも骨が好きだろう」
→「生物である犬が骨を好きなら、他の生物も骨が好きだろう」
そんなわけないですよね。本質を捉えきれず、間違った概念に行き着いた場合、「抽象化」の思考プロセスは、失敗します。
本質を理解し、具体的な行動につなげる
冒頭の「店舗の例」でさらに抽象化のプロセスをたどり、新しい行動に行き着いた例です。
より追求していくことで、このような行動も生まれます。
「ということは・・・だろう」
一つの物事を観察し、抽象化から具体的な行動を生み出すヒントは「ということは・・・だろう」という考え方を用いることです。日々、仕事の中で発生しているコミュニケーションや事象の中から抽象化のプロセスを用い、発想や行動の幅を広げていきましょう。
「気が利く人」とは「抽象化」が得意な人です。