組織がどうあるべきか考えたときに、多くの人が悩む問題。今回はその問題について、先人の知恵から学びたいと思います。
チームには、どっちが大事?
さて、唐突に出された質問に対して、どのように答えますか?少し考えてみてください。
左の絵は、「チームワーク」「仲の良さ」「人間関係」「配慮」といった人の気持ちの部分を重視する考え方です。一方の右側は、「目標達成への意識」「コミット」「厳しさ」「ストイックさ」といった、売上やKPI等、目標達成を重視する考え方です。
自分自身はどのように考えるか、あるいは、現在のチームはどちらを大切にしているか、上司や先輩、同僚、後輩はどのように考えているのかを想像してみましょう。
さて、少し検討してみたところで、先人の知恵、体系だった理論の紹介です。
PM理論
1966年、三隅 二不二(みすみ じゅうじ)さんという方が、次のような図を発表しました。(どうやら、どちらが大切なのかという問題は、何十年も前から議論されていたことだったんですね。)
簡単に説明すると、目標への意識の強さを「P」として横軸に設定し、集団維持への意識の強さを「M」として縦軸に設定した図です。大事なポイントは、「左右どちらか」ではなく、目標への意識と人への関心を縦軸と横軸で示した点です。
この図を用いて、自分の意識や現状のチームはどの位置に属しているか、確認することができます。では、細かく見ていきましょう。
P(Performance function)目標達成機能
集団の目的達成や課題解決に関する機能。「P」が高い組織は、目標設定や計画立案を厳格に実施し、指示・指導などにより、成績や生産性の向上を目指しています。
具体的には、「綿密な計画を立てて細かく進捗管理をする」「ルールや規則を守るために、厳しくメンバーを指導する」「進捗に遅れがある場合、原因と責任を追求する」といったことが日常的に行われている組織です。
M(Maintenance function)集団維持機能
集団の維持に関する機能。「M」が高い組織は、集団の人間関係を良好に保ち、チームワークを強化、維持する意識が強いチームです。集団維持機能が強い組織とは、「メンバー1人1人を気づかい、頻繁に声をかける」「メンバー間の人間関係に対立がある場合などに、積極的に関与をする」「メンバーのモチベーションや心のケアを大切にする」といったことが珍しい風景でない組織です。
マネジリアル・グリッド
組織のあり方について、思考を深める前に、もう一つの理論をみておきましょう。
PM理論と似ています。1962年に、ロバート・ブレイクさん、ジェーン・ムートンさんが発表した研究結果です。
9×9の上図を用い、「人への関心の高さ」「生産への関心の高さ」の2軸で、現在のチームがどの位置に属しているか確認します。
彼らの研究結果は、「人への関心」「生産への関心」両方に関心を持って行動するリーダーが属するチームが高い成果を出していました。
ただし、一般的に良い結果を生むことが多いが、必ず良い結果が得られるとまでは言い切れなかった点は、理解しておくべき点です。あくまで傾向の話です。
チームワーク、目標意識、どっちが大事?
つまり、どっちも大事です。この質問自体が意地悪な設問でした。
チームワークと目標意識は、対極にあるものではないです。縦軸と横軸で考えることが大切です。一見、対極に見えるけれども、両立できることは多々あります。今回の例はその一つです。
リーダーやメンバー間で働く仲間への関心がないチームは、人材の存続と維持が難しくなります。つまり、どんどん人が辞めていっちゃうんですね。一方で、どんなにチームワークがよくても、生産や目標への意識がなく、目標が達成できないチームは解体・解散の対象となります。
自分自身やチームの現況は、PM理論やマネジリアル・グリッドにおいて、どの位置にいるでしょうか?位置を確認できたとして、不足している方の意識を高めることはできますか?人は、自分の考えに合っていれば「合っていた」と安心し、異なっていれば「必ずしもそうは言えないだろう」と、受け入れたくないものです。
目標への意識が足りない人は、目標への意識を高めることができるでしょうか。
人の気持ちへの関心が薄い人は、人の気持ちへの興味を持つことができるでしょうか。
もしも、現状に課題を認識しているのであれば、意識を変えてみましょう。意識が変われば、行動や結果が変わってきます。